小説の下書きです(44)

女性リポーターは国連で演説する「世界平和の提案書」の原稿を手に持って稔に質問をした。
「この提案書は素晴らしいことが書いてあるけど稔君が書いたの?」「いえ、僕じゃないです。インターネットで知り合った幸夫さんに書いてもらいました」「そう、ところで稔君はどうしてこういう話に興味があったの?」「それは〜、借金がきっかけなんです」「借金?・・・誰の?」「僕じゃないですよ。国の借金です」


「国の借金からこんな話になるなんて不思議ね、ハハハハごめんなさいね。どうしてなんだろう?」「国の借金は僕たち国民が返さなきゃいけないって聞いたんです」「それで?」「僕は借りたことのない借金を返さなきゃいけないのが不思議でインターネットで大人の人に聞いてみたんです」「はい、それで?」「物々交換をやめなきゃいけないって」「え?」「僕も『え?』って思いましたよ、ハハハハ」「ですよね」


「お金は物々交換を便利にしただけだって。物々交換はいまでも続いているんだって」「そう言われるとそうよね」「でしょ?。だから世界中が家族のようにならなきゃいけないって」「どうして?」「家族は物々交換もお金のやり取りをしないでしょ?」「そう言われるとそうよね」「世界中の人たちが家族のようになればお金のやり取りもしないし世界平和も実現するんだって」「な〜るほど。稔君のお話聞いていると学校の先生のお話を聞いているみたい。ハハハハ」「そうですか?ハハハハ」


「提案書を読んでみてお金のない世界の話が書いてあるけど稔君の言葉で聞くと説得力があったわ」「そうですか?」「稔君が国連で演説するって聞いたけど稔君なら大丈夫ね」「そうですか?」「稔君とお話している大人の人たちはどんな人たちなの?」「栄治さんと幸夫さんと美佐枝さんと素子さんです」「へ〜、いろんな人たちがいるんですね」「はい、インターネットでお話しすると時々いろんな人が意見を書いてくれるので勉強になります」


「インターネットで遊ぶ人が多いのに稔君は素晴らしい社会勉強をしているのね。借金の話から世界平和の話になるまで稔君はどう思ったの?」「どう思ったかって?」「世界平和を望む人が多かったと思うの、どんな意見が多かったの?」「世界平和を望む人は多いのに実現しないと思っている人が多かったです」


「それでも稔君の仲間たちは世界平和が実現するって思っていたのね」「はい、実現しないと思っている人は実現しない理由ばかりを言っていたんです」「そうなの、私もその一人かもしれないわね。世界平和を望んでいるのに可能性を信じていない自分があるから」「僕は借金で苦しむのがイヤだから世界平和の実現をしたいんです」「それが一番の力ね」


二人の会話は趣味の話や宇宙の話で時間が過ぎていき・・・・


「そろそろ終わりになりますが、稔君が国連で演説できるように応援してるね。今回は本当にありがとうございました」「ありがとうございました」


取材班は後片付けをしながら「3日後の夕方ニュースで流しますから見てね」と言って家族に挨拶して帰って行った。