小説の下書きです(38)

稔は帰宅するとインターネットを開いて仲間たちへ状況報告した。
「みなさん、学校で提案書の勉強会をしました。そしたら先生が『世界平和はなぜ実現しないのか?』という宿題を出されました」しばらくして栄治が「学校の先生にも答えは見つからないんだろうね」「とりあえず、みんなが親に聞いたりインターネットで理由を探そうと言うことになりました」


しばらくして参加者が集まり意見交換した。
「世界平和が実現するとお金儲けができなくなるという人たちもいるよね」「それは戦争兵器を作る会社でしょ?」「そこで働いている人たちは死活問題よね」「戦争は無いほうが良いけど戦争が無くなると困る人たちがいるということですよね」「殺すための道具を作る人たちと、敵から自国を守る人たちの生活がかかっているってことね」


そこで稔はみんなに質問をした。
「いままで世界平和が実現しなかったのは戦争が無くなると困る人たちが多かったからですか?」「そうだね。結論はそういうことかな〜」「それだけじゃないでしょう」「心の問題とか考え方の問題もあるんじゃないですか?」「やっぱりお金の要る経済活動の中では心も思考も敵味方にわかれて判断するんじゃないかな〜」


「だから僕が提案したようにもう一つの世界が出来たら良いってことですよね」「そうだよね、いまの社会システムの中では世界平和は夢物語になってしまうよね」「経済活動の中でしか考えられない人は世界平和は不可能だと思っていると思うよ」「やっぱりそうなんですね」


稔はわかっていたことだけど宿題の答えを書くには難しすぎた。


数日後宿題の発表会をした。
「みなさん、宿題の答えの用紙を集めてください」
後ろから集めた用紙を先生がファイルに収めた。
「みんなの答えはあとから先生が読んでまとめます。ところで、調べてみた感想をみんなに発表してもらいたいんだ」「え〜」みんなは驚いた。


「みんなの答えは尊重するよ。でも、紙には書いていないみんなの気持ちを聞きたいんだよ」「そうなんですか。それなら言いたいことがいっぱいあります(笑)」「何でも良いから言ってくれ」


みんなは手を挙げて言いたいことを順番に言った。
「大人はずるいと思いました。世界平和は自分とは関係ないってお父さんが言ってました」「僕の父さんも言ってたよ」「僕のお父さんは子供の頃から世界平和になったら良いって思ってたけどいつのまにか大人になって何も出来なかったって言ってました」「大人のずるさが出ているんだね、他には?」


「大人も子供と同じところを見つけました」「何を見つけたの?」「面倒くさいことはしたくないから出来ない理由を考えているってことです」「へ〜、何だろう?」「それはね、私が買い物を頼まれて行きたくないから『いま宿題やってるから行けない』と言ったときと同じなんです」「うんうん、それで」


「世界平和なんて難しいじゃないですか、お父さんはボランティア活動もしているけど会社の仕事が忙しくて私たちと遊ぶ時間がないんです。たまに休んでいるときも『仕事で疲れているから』って私たちと遊ぶことができないし、世界平和なんて考えもしないんです」「そうだね。仕事を優先するから子供のことや世界平和のことまで考える暇がないんだね。ほかに意見のある人いますか?」


「はい!」「稔君どうぞ」「はい、みんなの話を聞いて思い出したんですけど、インターネットでいろいろ調べたり大人の人とお話して思ったことなんですけどね。夢や希望を言う人は多いのに夢や希望が実現するために行動する人はほとんどいないってことです。それと政府の批判や愚痴を言ってる人も多かったです」「そっか〜、なるほどね。みんなもありがとう」


世界平和は誰もが望むことなのに世界平和のために行動を起こすことが出来ない理由をいっぱい持っているようです。


先生は生徒たちの本音を聞いたのち宿題の答えを読みながら違う視点で生徒たちに考えるきっかけを考えていた。