小説の下書きです(48)

ユーチューブのコメント欄には多くの意見が書き込まれた。
「僕は大学生です。安全保障について考えていたけど世界平和の実現が一番良いんだと気付かされました」「政府がやれなかったことが一般人でもやれることが出来るような気がします」「私は中小企業の経営をしています。社会に役立つ製品をいっぱい発明したけど儲からないので廃業を考えています。この提案書を読んでみて私たちの技術が社会の役に立てそうな気がしています。私たちもぜひ参加させてください」など。


とくに日本の中小企業の経営者や大学の研究員が注目していました。自分が培ってきた技術が経済活動の中では実用化されてこなかったこと。資金不足のために開発を断念せざるを得なかったこと。彼らはお金儲けのために技術を磨いてきたわけではなかった。社会のために自分たちの技術を活かしたかったのだ。


大手企業も販売量を増やすために発展途上国への進出して一時的に売り上げを上げても為替の変動で利益を上げられず、利益中心の経営に将来の不安を抱えていたが、今回の提案に企業の将来性を感じ取ったようです。


そして、世界平和の実現に注目したのは軍事基地を持つ市町村の人たちだった。
「世界平和になれば軍事基地は要らなくなるんですよね。そうなれば大賛成です」「私たちは基地があるから平和が守られると教わってきました。だから軍事基地を受け入れて危険や騒音を我慢してきました。世界平和はそういう我慢をしなくても良いんですよね」「私は核を無くす活動をしてきたけど戦争抑止力のために必要だと言われて反論できずにいました。これで解決できますね」


テレビ番組ではお金中心の経済活動に疑問を投げかける話題が多くなっていた。お金がかかり過ぎるオリンピックの誘致を辞退する都市が増えたり、経済活性化のために賭博と言われるカジノを合法化したり、全国で800万戸を超える空き家があっても新築が止まらない。経済のために耕作放棄地が増えている。活用されない田畑が商業地や工場団地に変えられている。


お金を稼ぐ必要のない社会になれば本当に必要なものが守られるのではないか?
そういう話題が増えていた。


掲示板では幸夫が「みなさんもすでに知っていると思いますがユーチューブの視聴回数が100万回を越えました。先日民放のテレビ局からメールが届きました。稔君と一緒にテレビに出て欲しいと言うことです。稔君に了解をもらわないと返事が出来ないので保留状態にしてあります。稔君、これを見たらご両親と相談して返事してくださいね」


これを読んだ稔はすぐ両親に相談して了解をもらった。そして「幸夫さん、お父さんとお母さんに言ったら条件付でOKが出ました。条件はいつも通りに学校へ行くことでした。よろしくお願いします」とコメントを入れた。
「稔君ありがとう。さっそくテレビ局へ了解のメールをしておくね。それから稔君の都合の良い日とテレビ局の都合の良い日を相談しながら決めますね」「よろしくお願いします」


そろそろ忙しくなりそうです。