小説の下書きです(53)

国連本部に到着した幸夫と稔はすでに会議が始まっていた会議場のそばで待つように言われた。
心の準備は出来ていたものの本番が目前に迫ると緊張が高ぶってきた。


会議場の中では稔の紹介がされているのが稔の耳に入ってきた。「出番になりましたのでこちらにどうぞ」と案内され、稔と幸夫は会議場の中に入って行った。各国の代表者たちは立ち上がって拍手をして二人を歓迎した。


稔は壇上へ幸夫は稔のそばにある椅子の横に立ってゆっくりと丁寧にお辞儀をした。幸夫は椅子に座り稔は手に持っていた封筒から提案書を取り出した。そして読み始める前に一言国連と各国代表者の人たちにお礼の言葉を言った。


そして「それでは僕の提案を読ませていただきます」と言って提案書を読み始めた。


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私たちは世界平和の実現を提案します。


いままで私たちは
軍隊を無くせば平和になれると思っていました。


なぜ軍隊が無くならないのか?
軍隊を必要とする世界だからです。
奪い合いや騙し合いの世界だからです。


世界平和になれば軍隊は要りません。
軍隊や核を無くすための努力より
世界平和の実現に努力を傾けたほうが良い。
そう思うのです。


世界平和は
「支え合い」「分かち合い」の世界です。
互いが互いを必要とし助け合っているのです。


それが実現するための提案をします。


一つ目の提案ですが、国連を中心とした
国際支援団(International support group)の
設立をお願いします。


「国際支援団(ISG)」とは
国境なき医師団」を参考にして
世界中の国と地域が参加して作られますが
国際支援団(ISG)は常時活動する団体です。


設立の目的は
世界の貧困や差別を無くすことです。


世界のあらゆる地域が独自の文化が守られ
安心して生活できるお手伝いをすることです。
世界中の技術と資源を無駄なく有効活用します。


国際支援団の仕事は
それぞれの国の代表が
「自分の国が出来ること、出来ないこと」
「自分の国に足るもの、足らないもの」
「自分の国が必要なもの、して欲しいこと」
シェアをし合います。


そして
農業生産が出来る所
工業生産が出来る所
科学技術が得意な所
世界中で生産と技術を分かち合うのです。


たとえば
「私たちの国は土地は広いけど砂漠が多いです」
「私たちは砂漠を農地に変える技術を提供します」


「海に面しているけど水不足で困っています」
「私たちは海水淡水化の技術を提供しますよ」


「水はいっぱいあるのに汚染がひどいです」
「私たちは汚泥浄水装置を提供しましょう」


「広大な農地はあるけど生産能力が低いです」
「私たちが生産能率の高い技術を提供しましょう」


「きれいな海に面しているので養殖技術が欲しい」
「私たちが養殖の技術を提供しましょう」


などなど
もっとたくさんの協力関係が出来上がります。


国際支援団の活動の仕方を少し説明させていただきます。


国の代表だけでは部族間の格差が出来ますので
地域活動の組織編成は地域の人がリーダーとなって
世界中の人が参加して行います。
地域の風習やしきたりや宗教に合わせた活動が
求められるからです。
それぞれの地域や宗教を大切にし合う関係を作れば
世界平和にもつながると思っています。


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ここまで読んだ時、会議場で拍手があがった。とくに発展途上国や部族間で争いが多い国であった。
そして、その拍手は会議場全体でしばらく続いた。


稔も幸雄も支援団の働き方の文面を追加したことが良かったと安心していた。拍手が終わってから稔は続きを読み始めた。