母娘の会話より「自分のために生きるって?」

「ねえ、お母さん『自分のために生きなさい』って言われたよ」
「誰に?」
「先生に」
「自分のために生きるってどういうことなの?」
「お母さんだってわかんないわよ」



「お母さんは自分のために生きてるの?」
「そうね〜、お父さんとあなたたち子どものためかな〜?」
「じゃあお母さんは自分のために生きていないの?」
「そうね〜。でもね家族のために生きると楽しいのよ」
「じゃあ、お母さんはつらくはないの?」
「ぜんぜん(笑)」



「私ね、自分のために生きるってわがままだと思ったの」
「何でそう思ったの?」
「自分以外のために生きるとつらくなるんじゃないかって」
「それは自分を犠牲にするからじゃないかな〜?」
「自分を犠牲にするって?」
「我慢しなくちゃいけないってことよ」



「じゃあお母さんは家族のために我慢していないの?」
「そうよ〜。みんなが喜んでくれると嬉しいのよ」
「そうなんだ〜♪そういえば思い出したことがあるよ」
「何を思い出したの?」
「それはね、私のクラスに新聞配達する男子が二人いるの」
「まあそれは感心な子ね」



「一人は毎日楽しそうで一人はつらそうなのよ」
「何かわけありみたいね」
「楽しそうな男子はね自転車を買うためにやっているんだって」
「何で自転車を?」
「大好きな女子とサイクリングの約束をしたんだって」
「それじゃあ自分のために働いているんだね」



「もう一人の男子はね母子家庭なの」
「お父さんはいないの?」
「うん。だからね生活費を稼ぐために働くんだって」
「大人から見るとこっちのほうが素晴らしいと思うよ」
「でもね、お母さんの話を聞いていると違うのよ」
「何が違うの?」
「自分のために生きるという意味が」



「そう言えばお父さんだってお金のために働いているね」
「お父さんは家族のために働いているって言ってたじゃない」
「そうよ、家族のためにお金を稼いでいるの」
契約社員だから一日1万円って言ってたよね」
「そう、一日休むと1万円少なくなるの」
「だから風邪を引いても無理して働いているんだ」



「お金の無い社会ならお金を稼ぐ必要がないからね」
「だったら自分を生きることって簡単なのよね」
「なぜ簡単だと思うの?」
「だって〜、自分と誰かが喜ぶことだけ考えればいいから」
「お金の心配をしなくていいもんね〜」