小説の下書きを書いてみよう(10)

あらためて稔は聞いてみた。「やっぱりお金が儲からないと農業もやっていけないんですね」「そうよ、生活費が要るからね、だから兼業農家が多いの」「兼業農家って?」「家族の中で農業以外のお仕事をしてお金を稼いでいる農家のことよ」「あ!そっか〜、お年寄りは生活費を稼がなくても良いから安心して農作業をしているんですね」「そうね、年金収入もあるからね」


生活費を稼がなくても安定した生活が出来るのならボランティアでも良いじゃないか?
稔は自分がボランティアをしたことを思い出した。「僕だってお金を稼がなくても良いから安心してボランティアが出来たんだ」と。


お金を稼がなくても生活が出来るのならお金のない世界は出来ると思って、稔は栄治のことを思い出した。


「栄治さん見てますか?」「見てるよ」「栄治さんはお金の要る世界とお金のない世界とどっちが良いですか?」「もちろんお金のない世界だよ、でもねまだお金のない世界が想像できないから怖いよ(笑)」「僕はなんだかワクワクするよ(笑)」


栄治は稔に聞いてみた「どんなことを想像するの?」「お金のない世界ってなんでもタダでしょ?」「そうだね」「欲しくても買ってもらえなかったおもちゃやゲームのソフトも自由に使えるよ」「そこなんだよね〜、怖いのが」「どういうことですか?」「なんでも努力しないで欲しいものが手に入ることとたくさん作って資源が無駄に使われないかってことね」


そこへ素子がコメントを入れた。「たしかに欲しいものが簡単に手に入れると努力をしないようになるだろうけど、物への執着がなくなって良い面があると思うわ」「あ〜、そういう面も考えられますね、納得です」「そういう考え方もあるんですね」と稔も納得してコメントを入れた。


「あと、資源が無駄に使われないようにしないとね、なんでもタダだったら使い捨てが当たり前のようになってしまう気がするよ」と栄治は不安を語った。


そこへ一つのコメントが入ってきた。「こんにちは幸夫(ゆきお)と言います、お邪魔して良いですか?」