小説の下書きを書いてみよう(18)

美佐枝は思ったことを書き続けた。
「もう一つの世界を作るという稔君の提案に共感するんです。なぜそう思うのかというと数年前ある記事を見たんです。それは善意の井戸が壊されるという記事でした。みなさんもテレビ番組で善意の井戸を見たことがありますか?」「僕見たよ、でも井戸が壊されるなんて知らなかった」と稔が答えた。


美佐枝が伝えたかったのは「貧困国に作った『善意の井戸』を巡り大虐殺も...マスコミが伝えない人道支援の闇」という記事で、「日本人が善意で行った支援活動が、現地では殺し合いのキッカケになってしまったのである。」という内容であった。


美佐枝は続けて「多くの支援活動が素晴らしい結果を出していることは間違いのないことですが、この記事にもあるように一時的に部分的な支援より全体を同時に支援活動をしたほうが良いことに気付いたんです」「本当に悲しいことですね」素子がつぶやいた。


栄治が思い出したように「だから国連の活動を疑問視する人が多いのかな〜?」と書くと美佐枝が「国連は大切な機関だと思うんです。それを有効に生かすためには稔さんが提案したようにもう一つの世界を作る必要があると思いました」


たしかに現実の裏に潜んでいる現実は多くの人に知らされていない。


「もう少し真剣に情報を収集してみませんか?」「そうですね」幸夫の提案にみんなは賛同した。
「もう一つの世界を作るという思いを強くするためにもいろんな立場の意見を知っておくことは良いことだと思いますね」素子は心からそう思ってコメントした。


そして、それぞれがインターネットを活用して世界の現実を知り、もう一つの世界を作るヒントを探すことになった。


翌日、稔が「おもしろいのを見つけました」とコメントを入れた。「あれ?誰もいないの?」稔は残念そうにコメントだけ残そうと書いた。「ベーシック・インカムというのを見たんです。これなら誰もお金で苦しむことは無くなるって。こんなのはどうですか?」


しばらくして幸夫が返事を書いた。「稔君こんにちは、僕も以前から知っていたけどね、お金の要る世界を続けるには良いアイデアだと思ったよ。稔君が提案したようなもう一つの世界を作る過程としてならこのベーシック・インカムは一時的な効果はあると思うよ」


「でしょ?とりあえずお金で苦しむ人がいなくなればお金のない世界をイメージする人が増えると思ったんです」という稔の意見に美佐枝がコメントを入れた。


「私も興味があった時期があって調べてみたんですけどね、スイスではベーシック・インカムを導入するかを国民投票をしたら否決されたって、主な反対意見は膨大な原資が必要だということ、労働意欲がなくなり経済的混乱が起きる、資本主義社会にマルクス主義の思想はそぐわないって」


「やっぱりね、お金の要る世界ではお金ですべてを解決するなんて不可能ですよね」栄治も参加してコメントを入れた。「せめて日本だけでもこのベーシック・インカムをやって欲しいわ、年金だけでは生活費が足らないのよ」素子が深刻なコメントを入れた。


国民年金は20歳から60歳までまじめに納入しても年額80万円しかもらえないのだ。月額7万円以下で生活しなければならない。これも現実の一つです。