小説の下書きを書いてみよう(14)

競争することで人間は成長する。
誰もがそれを信じているから競争は必要だと思っている。
栄治は質問をしてみた「競争をやめたら人間は怠惰になり社会は衰退に向かうんじゃないですか?」「たしかに、より良くなるためには競争が便利ですね。大規模リサイクルセンターの仕組みを考えていたとき思ったんですよ」「仕組みと競争になにか関係があるんですか?」「そうなんです」


幸夫は続けてコメントした。
「大規模リサイクルセンターではすべての製品が持ち込まれます、センターでは再利用を基本に考えますから製品の規格が同じであることが便利なんです。早い話が企業間で部品が融通できれば『より良い』ことなんです」「あ!思い出した、ビデオテープがベータとVHSがありましたよね、あれも二台のデッキを買うのがもったいないって父親も言ってましたよ」と栄治が思い出したようにコメントした。


「メーカーによっていろんな部品を作るから資源がもったいないしね、車の部品も電気製品の部品も企業間で同じ規格のものを作れば良いのにって思ったんです」「それで競争はやめたほうがいいって思ったんですか?」稔は少しわかったような気がした。


幸夫は続けて「そうなんです、さっき栄治さんが怠惰とか衰退とか書かれていたけど、僕はこう思うんです。競争は共走と協走に変わり、共に走る共走と協力しながら走る協走が成長を促せてくれると」「おもしろい発想ですね、競争と言う言葉が無くなるんですか?」「いえ、違った競争があるんですよ」「え?どんな」栄治も稔も思いつかなかった。


「稔君は学校でテストの成績とか運動会の徒競走の順位が気になることがあるでしょ?」「はい、成績は進学に影響あるし、徒競走でビリになると恥ずかしいです」「それは他人との競争なんだよね」「はい、そうです」「僕は他人との競争より自分との競争に興味を持ったんです」「どういうことですか?」


「栄治さんが言ったように競争が無くなると怠惰や衰退とか言ったよね、ところで怠惰とか衰退の意味わかりますか?」「はい、さっきインターネットで検索してわかりました」「便利よね〜♪」と久しぶりに素子がコメントを入れた。


「素子さんありがとう♪、自分との競争についてだけどね、昨日のテストの成績より今日のテストの成績が良かったら嬉しいよね、しかも先生や友達から褒めてもらえたら」「はい、嬉しいです」「徒競走も友達より早く走る努力より今までより一秒早く走れたほうが楽しいという教育に変えたほうが良いと思ったんです」


栄治が思いついたようにコメントを入れた。
「大規模リサイクルセンターの役割を考えたら企業のあり方や人間の生き方が変わるってことですか?」「そうなんです、お金のない世界だったら人も社会も成長するんじゃないかって思ったんです。それと、大規模リサイクルセンターは地震や台風などの自然災害に対しても即効果があるんです。すぐに回収できること、すぐに使えるものを提供できることですね」


稔はワクワクしながら「そんな大規模リサイクルセンターが出来たら見学したいです」とコメントした。そうすると栄治が「いっそのこと義務教育の一環で体験学習したらどうでしょう?」と意見を述べた。
幸夫は「僕もそれを考えましたよ、体験することで資源の大切さもゴミ分別の必要性も自然と理解するようになりますからね」


お金の要る世界では「得るための競争」が必要でした。
そのための奪い合いや騙し合いが心を痛めていたんです。