お金を知らない子(6)

店長の質問が続いたあと稔が質問をしてみた。
生い茂る山の坂道を下りながら林の中を指差して


「何かあるみたいだけどあれは何ですか?」
「あ~あれは不法投棄のゴミなんだよ」
「ゴミって?」
「誰かが電気製品や廃タイヤなんか捨てるんだ」
「へ~悪い人がいるんですね」
「稔君の世界ではこんなことはないんだろう?」
「はい。ないです」
「要らない物はどうしているんだ?」
生ゴミのように循環社会になっているんです」


生ゴミ以外の循環はどうなっているんだろう?
店長は改めて稔に聞いてみた。


「稔君の世界ではどのように循環してるの?」
「この間、大規模リサイクルセンターに学校から
 見学に行ったんです」
「大規模リサイクルセンターって何?」
「すべての要らない製品を回収する所ですよ」
「すべての要らない製品って?」
「さっきのような電気製品や家庭用品すべてです」
「それは無料?あ!お金は無いんだった(笑)」


「それらは回収するの?それとも・・・」
「持って行くのもいいし定期的に回収しますよ」
「それなら資源が無駄なく使えるから安心だね」
「不法投棄を回収する労力がもったいないですね」
「そうなんだよ。何をするにしてもお金が要るん
 だから初めからセンターを作ったほうが良いね」


「一つ気になったんだけどね車も回収するの?」
「はい。車も回収して中古車が新品のようになる
 んです。でも新型がよく作られますよ」
「それはどういうこと?」
「いくつかモデルを作って人気投票するんです」
「人気投票で多かった物を生産するってこと?」
「はい。そうなんです。みんな楽しんでいます」
「何だかそっちの世界のほうが楽しそうだな~」
「でも、好みに合わせて改造車もありますよ」
「ますます憧れるな~(笑)」


店長は現実の世界との違いを感じていた。
そろそろ
店長の家に近付いた。