お金を知らない子(14)

お金のない世界が自由なのか?
お金の要る世界が自由なのか?
健司はもう少し深く考えてみた。


「なあ稔君、稔君がこの世界を見て何を感じる?」
「何を感じるって?」
「僕たちはお金のお陰で便利になったと思ってい
 たんだけどね、稔君の世界の話を聞いていると
 なんだか不自由を感じるんだよ」
「そうですね。僕もそう思います」


健司はお金のお陰で交換システムを便利にしたこ
とは人類の叡智だと信じていた。
稔は思い付いたように健司に聞いてみた。


「さっき物々交換が便利になったって言ってまし
 たよね。お金のお陰でって」
「そうだよ。あ~そうか」


健司は何かに気付いた。


「稔君の世界では交換システムはないんだ」
「僕もそう思いました(笑)」


健司はパソコンのスイッチを入れた。
インターネットで何かを調べようと。


「何か調べるんですか?」
「うん。お金の役割を調べて見るんだよ」
「お金の役割って知っているんじゃないですか?」
「まだわからないことがあるんじゃないかってね」
「簡単なことじゃないんですね」
「ハハハハ・・・お!これはどうだ?」
「何かわかりましたか?」
「経済学者がこんなことを書いてるよ」
「どんなことですか?」
「お金は自由を得るための道具であるって」
「お金がないと自由になれないってことですか?」
「そういうことらしい(笑)」


現実としてお金がないと何も得ることが出来ない。
交換システムだからである。
稔は交換システムの必要性を健司に聞いてみた。


「どうして交換システムがあるんですか?」
「そうだよな~。交換システムは昔からあったか
 らね。それが当たり前だと思っていたから疑問
 にも思わなかったな~(笑)」
「僕たちが習った経済とは違うんですね」
「そうだね。経済活動ってお金の流通がメインだ
 からお金のない経済活動って考えられないね」
「だからお金がないと何も出来ないんですね?」
「そうだよな~やっぱり不便だよな~」
「お金を持っている人だけが自由って感じ?」
「そう思いたくないけどそうかもしれないね」


稔は自分なりにお金の要る社会を考えてみた。
この社会では分かち合いは簡単ではないこと。
健司にはその思いを伝えなかった。