二人が話に夢中になっていると突然テレビの画面
が真っ黒になって照明も消えた。
「あれ。停電になったんじゃないか?」
「そうね。近所のガソリンスタンドの照明も消え
てるから停電みたいよ」
稔は夫婦で右往左往している状況を見て聞いた。
「停電ってすぐ治らないんですか?」
「電力会社の作業次第だね」
「このお家は自家発電してないんですか?」
「我が家はお金にゆとりがなくてね(苦笑)」
「ゆとりのあるお家は自家発電してるんですか?」
「そうだよ。太陽光発電とかやってるね」
「そうなんですか」
健司は自分の世界と稔の世界の電気はどのように
違いがあるのか聞いてみた。
「稔君の世界では電気はどうなってるの?」
「ほとんどの家は自家発電していますよ」
「やっぱり太陽光発電なの?」
「いえ、それは少ないです」
「じゃあ、どんな自家発電なの?」
「フリーエネルギー発電って言ってます」
「どんな仕組みなの?」
「僕は詳しく知らないんですけどね。空間にある
エネルギーを使っているんだって習いました」
「へ~、それなら害もなく無尽蔵に使えるんだ」
健司はよくわからないのになんとなく納得した。
そして
気になる原子力発電のことを聞いてみた。
「原子力発電ってあるの?」
「学校で習ったことがあるけど、原子力発電が作
られる前にフリーエネルギー発電が実用化され
たそうです。原子力発電って放射能が怖いって
言ってました」
「そうだろうね。現実の世界では原発事故で本当
に困っているんだよ」
「僕たちの世界では子ども達が水力発電を作って
遊んでますよ」
「小川でも水利権というのがあって勝手に水力発
電を作ってはいけないんじゃないの?」
健司は言い終わってふと気が付いた。
お金のない世界では水利権なんてあるわけがない。
案の定、稔はなんとなく意味がわかったので
「誰でも勝手に水力発電を作っても良いんですよ
でもね、周りに迷惑をかけてはいけないけど」
「田舎の小川では手作りの発電機が活躍だね?」
「はい。街灯とか害獣を寄せ付けない照明の電気
とか田んぼに水を汲み上げるポンプとかにね」
「やっぱり電気って自然の恵みなんだな~」
「お金の要る世界って不自由なんですね」
健司は稔にそう言われると自由って何だ?
と思った。