お金を知らない子(19)

健司は政治の違いを知って次の疑問が湧いてきた。
日本国内の状況はなんとなくわかったが世界との
関係について聞いてみたくなった。


「稔君。君の話はとても参考になるんだけどね、
 世界との関係はどうなってるんだろう?」
「世界との関係って?」
「日本は平和な国なんだよ。その平和を守るため
 に自衛隊という軍事力を持っているんだけどね
 世界とは表向きは平和な経済活動をしているの
 に領土を奪われないように軍隊があるんだ」
「怖い話ですね。僕が習った歴史でも戦争や軍隊
 の話は知ってます。でも今は戦争になることが
 ないから警察だけあります」
「警察だけ?」
「社会に迷惑をかけたりする人はいますから」
「そうだよね」


警察の必要性はなんとなくわかったものの軍隊が
無くなるってどういうことなんだろう?
領土問題なんか無くなるはずはない。
そんな疑問が湧いてきた。


「なあ稔君、どうして軍隊が要らないんだ?」
「平和だからですよ」
「そりゃあ日本だって平和だけど領土の侵略って
 心配ないの?」
「侵略してどうするんですか?」
「そりゃあ・・・・」


健司はそれから先の言葉に詰まった。
稔には言い難い言葉だと思ったからである。
稔は健司の気持ちを察して話し始めた。


「平和って互いを必要としあってるんです」
「世界が助け合うとか言っているけどね」
「僕たちもそう習いました。助け合うということ
 は助けてもらうという内向きの気持ちになる人
 もいるって聞きました。だから『みんながいな
 いとこの世界は成り立たない』と言うことが良
 いんじゃないかって言ってました」
「なるほどね。互いの国も互いの国民も必要とし
 あう関係なら相手に困ることはしないね(笑)」
「国境はあるけど自由に行き来できるんですよ」
「そりゃあ良いね」


稔は子供たちの国際交流も話した。


「年に何回か世界中の友だちとホームステイをす
 るんですよ。言語を習ったり文化交流もしたり
 して楽しいです。日本文化に興味を持っている
 外国の人は多いです」
「それなら戦争なんて有り得ないよな~」
「はい。国境はあるけど無いようなものですね」
「それでも国境はあるの?」
「はい。文化を守るんだって言ってました」
「なるほどね。地方の良さを大切にする文化だね」


健司は軍事力で平和を守る方法に疑問を持った。
日本の平和は世界平和で守られるのではないか?