小説の下書きを書いてみよう(5)

「物々交換が無くなったら」というフレーズが頭の中を占領してしまった稔は「当たり前のこと」が揺らいでしまった。世間では【常識】と言うが。


稔は頭の中を整理しないと前に進めないと思った。
「え〜っと、最初は何だっけ?」
国の借金は僕たちが大人になっても返さなきゃいけない。
借りた覚えのない借金をなぜ払わなきゃいけないの?
借金を返すために重税を課せられて生活が苦しむなんて許せない。
お金は人を幸せにしてくれると思っていたのにお金のために苦しむのは変。


お金の大切さはお金がないと何も出来ない社会だからと言うことはお父さんの教えでわかった。
親から教わったことが当たり前だと思っていた。


学校で習ったことは「お金が出来たおかげで物々交換をしなくなり、お金はいつまでも保存が出来る便利な道具です」と。だから物々交換はしなくてもお金さえあれば何でも交換できると思っていた。


それなのに「物々交換が無くなったら」と言っている。そのコメントを書いた人に聞いてみようと思い「今の社会は物々交換じゃないでしょ?」と書き込んでみた。


しばらくして返事が返ってきた。「お金は物々交換を便利にするために作られたものですよ。物と物を交換するには不便だから信用のあるお金と言うものが交換するモノに変わったんです」


たしかに人間社会では自分が欲しいものは自分が持っているものを手放して他人のものと交換しなければ何も手に入れることが出来ない。お父さんに教わった「お金がないと何も出来ない」ってことは「お金がないと何も得ることができないってことなんだ」稔は納得した。


そして稔は改めて聞いてみた「物々交換が無くなったらなぜお金は無くなるんですか?」と。
「物々交換を便利にするためにお金があるでしょ?物々交換が無くなればお金は必要ないんですよ」「じゃあ、お金のない社会が出来るんですか?」「ええ、そうですよ」


稔は衝撃を受けた。
「そんな、この世からお金が無くなるなんて」そして「お父さんの仕事はどうなるの?」