小説の下書きを書いてみよう(6)

稔は12年の短い人生でも世の中の常識はわかっているつもり。お父さんが家族を養っていること。お金があるから生きていける安心感。


今までになかったお金のない社会。いや、「お金が存在しない原始的時代に戻ってしまうのか?」稔の頭の中はまた混乱してしまった。


「すみません、僕の頭の中が混乱してよくわからないんです。よくわかるように教えてください。お金のない社会ってどんな社会ですか?」「そうねえ、君は家庭の中でお金のやり取りをしないでしょ?」「はい、しません」「なぜお金のやり取りをしないの?」「それは家族だからです」「家族は何人いるの?」「家族は両親と妹と4人です」「地球が一つの家族だったら?」「あ!」稔は何かに気がついた。


稔は宇宙に興味を持った時期があった。地球は太陽の周りを回る青色の惑星であることも知っていたし、地球は【宇宙船地球号」という名前も好きだった。


稔は続けて質問をした。
「地球の上に住んでいる地球人を一つの家族として考えるんですか?」「そうね、そのように考えたほうがわかりやすいわね」「70億人以上の家族って一度も思ったことがないです」「宇宙空間から見ると地球って小さな惑星よ」「そうですよね」


稔はなんだかワクワクしてきた。それは夏休みの一人旅行を夢見ていたのだ。「一人でも旅行できるじゃないか」と。


「ねえ、旅行だって自由に出来るんでしょ?」「そうよ、運賃も食事も泊まる所もみんなタダだからね、ただし両親のお許しは要るわね(笑)」「わーい!いろんな冒険だってできるんだ」


稔は国の借金のことなんかすっかり忘れていた。


そのとき
「すみません、突然割り込んでしまいました、お二人の会話をしばらく傍観していたんですが、僕も興味があるので参加させてください」「いいですよ、僕は稔と言います、小学6年生で12歳です、よろしくお願いします」「僕はお金を稼ぐことに疲れた23歳のサラリーマン栄治(えいじ)です、よろしくお願いします」「申し遅れましたね、私は60歳の主婦素子(もとこ)です、よろしくね」


稔はなんだか仲間が増えてきたことに不安から解消された。