小説の下書きを書いてみよう(7)

稔は新しく参加した栄治のコメントに興味があって聞いてみた。「栄治さんはお金を稼ぐことに疲れたって言われましたけど、どう言うことですか?」「僕は大学を卒業して大手の会社に就職したんだけどね、売り上げを上げるために働かされているって感じで、なんだか自分らしくない仕事をしている違和感を感じたんだよ」


そこで主婦の素子が「そうよね、会社に入れば会社が儲かるための労働が義務付けられるからね、この社会の当たり前のことなんですね」「そうなんですよ、僕の先輩なんか売り上げが少ないからって、あたかも仕事をしていないかのようにイヤミを言われて転職を考えているんです」「こんなに景気が悪いと転職するにも希望の仕事は見つかりにくいわね」


稔は素子に聞いてみた。「お金のない社会だったらお金を稼がなくても良いんでしょ?」「そうよ」「だったら、働かなくても良いってことですか?」「働きたくない人は働かなくてもいいけど、働きたくなる社会になるのよ」「どういうことですか?」


またまた稔は疑問が増えてきました。
働いても働かなくても良いなんて。


「稔君はお家の中で働いたことがあるでしょ?」「え?子供は働かないでしょう?」「誤解しないでね、稔君はお家の中でお父さんやお母さんのお手伝いをするでしょ?」「はい、それなら毎日やってますよ」「自分の周りの人の役に立つことを働くって言うんですよ」


稔は働くことはお金を稼ぐことだと思っていた。お金を稼ぐためには仕事を探して働くことだと思っていたのだ。


「あの〜、僕のことで言われたらよく分かったんですけど、栄治さんのように大人の人はどうなるんですか?」「以前にも言ったけど、世界が一つの家族として考えれば分かりやすいかも知れないわね」「あ、そうでした」


稔の頭の中では理解が半分不安が半分あるようです。「あの〜、さっき働かなくてもいいって言われましたよね、働かない人が多かったら困るんじゃないかって思うんですけど」「ぜんぜん困らないわよ」「どうしてですか?」「生活に必要なものを生産して生活に必要なサービスがあればいいんでしょ?」


稔はわかったようなわからないような気分です。
「あの〜もうチョットわかりやすいようにお願いします」「では、電気・ガス・水道・着る服や野菜や魚などの食料、車や電気製品、学校や病院、遊園地公園などいつでも使うことができれば良いわよね」「はい、それならわかります」「いま、稔君は生活するのに困ってることはあるの?」「いえ、無いです」


この話題は何を意味するのか?
生産って何だろう?
売り上げって何だろう?
稔はもうチョット聞いてみたくなった。