小説の下書きです(39)

次の特別活動の授業では先生があらかじめプリントを生徒全員の机に配っていた。そのプリントには生徒たちに考えて欲しい内容が書かれていた。

「このあいだ、みんなの意見を聞いてとても参考になりました。ありがとう。きょうは先生とみんなが一緒に考えて欲しいことを書いてプリントにしました。これはみんなの意見と稔君からもらった提案書を参考に書いたものです。一度先生が読むから一緒に目を通してください」


〜〜〜〜〜〜〜


世界平和はなぜ実現しないのか?
それは大きな錯覚から来ているのかもしれない。


自愛や愛国心
自分が第一 自国が第一
それは
自分さえ良ければ良い
自国さえ良ければ良い


愛の勘違いだったのかもしれない。
愛はすべてを大切にする心。


自分を大切にしたいのなら周りの人を大切にすること。
周りの人を大切にすると周りの人は自分を大切にしてくれる。


自国を大切にしたいのなら他国を大切にすること。
他国を大切にすると他国は自国を大切にしてくれる。


お金の要る経済活動は自分や自国を最優先に考えてしまう。
自分が幸せにならないと周りの人を幸せにしてあげることが出来ない。
できれば世界中が一緒に幸せになったほうが良いんじゃないか。


〜〜〜〜〜〜〜


「ざっと読んだけどわからないところはありますか?」
「大きな錯覚って何ですか?」「たとえば自愛と愛国心で言うと・・・ところで『愛』ってわかるよね?」「え〜っと、好きってことですか?」「それもあるけど、大切にする心なんだよ」「へ〜」「続けるよ、自愛は自分を大切にする、愛国心は自分の住んでいる国を大切にする。ここまでわかるね?」「はい」


「自分を大切にするために他人を犠牲にしたり自分が住んでいる国を大切にするために他国を利用して自分の国の利益ばかりを追求する。ここまでわかりますか?」「はい、なんとなくわかります。このあいだテレビでTPPのニュースを見ていたとき父さんが『日本が損をしないように交渉してるのか?』って言ってました」「これも愛国心からくるんだろうね」


「これのどこが大きな錯覚なんですか?」「では、続きを読むよ。自分さえ良ければ良い、自国さえ良ければ良いという所です」「自分さえって考えている人は少ないと思いますよ」「では、貯金を考えてみるよ。みんなは貯金をしていますか?」「お年玉はまだ少し残ってます」彼の言葉で大爆笑を誘った。

「世界中に貧困や飢餓があるのは知っているよね」「はい。授業で習いました」「貧困や飢餓の人たちから見たらどうだろう?」「でも、貯金していないと困ることになるよってお母さんに言われたよ」「そうだよね。これは当たり前のことだよね。自分さえ良ければ良いって思っていないのにお金が無くて生きることさえ出来ない人たちから見たら?」「貯金するお金があるなら分けてくださいって言うでしょうね」


「そこなんだよ。提案書を読んでみてみんなにも考えて欲しかったことなんだよ」「自分が良くなるために誰かを犠牲にしてはいけないってことですか?」「そうなんだよ」