小説の下書きを書いてみよう(31)

「ついにお金を使わないシステムの提案が出てきましたね」美佐枝が待ち構えたようにコメントした。「お金のやり取りは本当に面倒くさいです。物に価値を付けなければ値段が決まりません。今すぐ欲しいものがあってもお金がないと手に入らない」


世界中で人や物が自由に行き来するためにはお金がないと何も出来ないシステムは不便です。世界が一つの家族のようになるにはどうすればよいか?


「助け合い、分かち合いの必要性はわかるんですけど、国レベルでも個人レベルでも自分の物は誰にも渡したくないっていう気持ちはどうすればいいですか?」と栄治が疑問を書いた。
「提案の中に『互いの文化を尊重し』と書いたのは互いの生活に必要な思想やものを侵害しないという意味合いを持たせたんです」「それはどういう意味ですか?」「個人や国が必要とするものを奪ってはいけないという意味なんです」


そこで素子が質問した「ものであれば所有権を侵害してはならないってことなの?」「そうなんですけどね、所有権は廃止したほうが良いと思うんです」「それは困るでしょう?」「所有権を廃止するけど使用権(占有権)だけで良いと思うんですよ」「どう違うの?」「もう一つの世界の提案は世界平和とお金のない世界だけどね、地球は一つの家族と言う考え方なんです」


「あ!このあいだ言ってましたよね、家族だったらお金のやり取りはしないし、自分の物でも自分が使わなくなったら誰が使っても良いって」と稔がコメントした。「そうなんだよ。自分が使っている間は誰も奪ってはいけないけど管理が出来なくなれば誰かが自由に使っても良いって言うことです」


個人の所有地も国の所有地もゴミ屋敷が増えたり森林破壊が増えたり、管理が出来ないのに放置している状態が所有権の存在でおきている。


「だからね、国でも個人でも使用権さえあれば他人や他国は侵害してはならないという決まりごとがあれば問題ないと思うんです。ただし『使っている間は大切に管理すること』が条件だけどね」「循環型システムと同じですね」「どういうこと?」「地球と共存するためには必要な約束だと思ったんです」「稔君もよくわかってきたね」「ありがとうございます」


「お金のやり取りをしなくても資源の奪い合いが無くなるためには今以上の信頼関係が必要になってくるわね」美佐枝が心配してコメントを入れた。
「それを助けてくれるのが国際支援団の活躍なんです。一つの地域に支援活動するのは200ヶ国以上の人たちが一団となって行動すれば世界が一つの家族のように理解しあえると思うんです」「それは良いアイデアだと思うわね」


それぞれの国や地域に応じた環境と人々を大切にするということを幸夫は言いたかったようです。