お金を知らない子(21)

健司は思い出したようにキッチンへ行った。
いつも飲んでいるサプリメントを取りに行った。


「健司さん、何ですか?それ」
サプリメントなんだよ」
サプリメントって?」
「栄養補助食品のことだよ」
「錠剤なのに食品って言うんですか(笑)」
「そう言われれば変だね(笑)」


「食事で足らない栄養をそれで補うんですね」
「そうだよ。稔君の世界ではこんなの無いの?」
「似たものはありますよ」
「似たものって?」
「薬品を作ってる工場が農業と漁業と一緒に健康
 を維持するための食品を作って病院へ持って行
 くんです」
「そう言えば稔君が言ってたよね。病気にならな
 いように病院へ行くんだって」
「そうなんです。体の調子が悪くなったら原因を
 調べて、もしも栄養不足が原因だったら不足す
 る栄養を補う飲み物をもらうんです」
「そりゃあ良いね~」


健司はレストランのオーナーだが毎日立って仕事
をするために腰や膝に支障が出ているようだった。


「稔君の世界ではテレビコマーシャルってあるの?」
「コマーシャルって何ですか?」
「生産者が消費者に買って欲しくてテレビで宣伝
 して商品の素晴らしいことを知らせるんだよ」
「へ~そうなんですか。僕たちの世界にもありま
 すよ。買ってもらうためじゃないけど(笑)」
「だよね(笑)」
「こんなものを作りましたよって知らせるんです」


「なるほどね。売るためではなく知らせるためか」
「はい、それを見てアイデアを募集するんです」
「いろんな人の意見を取り入れて新しい物を作る
 んだね。消費者参加型の製品作りなんだね」
「そうなんです。だからいろいろあるんです」
「いろいろって?」
「車なんか色もデザインも好みが違うでしょ?」
「だね。でも資源を使い過ぎるんじゃないの?」
「でも、すべてリサイクルセンターで回収して資
 源を無駄なく使うんですよ」
「そう言えば大規模リサイクルセンターですべて
 を再利用するって言ってたね。納得(笑)」


会話が盛り上がっている時に優希が帰ってきた。
幼友達の心(こころ)という女の子と一緒だった。