お金を知らない子(22)

「ただいま~」
「優希君おかえり~」
「稔君まだいてくれたんだね」
「うん」
「友だち連れて帰ったよ」
「こんにちは。僕は稔です」
「こんにちは。私は心。優希君の幼友達よ」
「稔君の話をしたら稔君に会いたいんだって」
「そうですか」


心は稔が自由に暮らせる世界の人だと優希から聞
いて興味本位で稔に会って話をしたがっていた。
子どもたちは居間に行って温かいココアを飲みな
がら会話の花を咲かすことになった。
そして心が会話の口火を切った。


「ねえ、稔君本当にお金って無いの?」
「うん、そうだよ。ここに来て初めて知ったよ」
「へ~、やっぱりそうなんだ~(笑)」
「だろ?稔君の世界はいいな~って思うよ」
「じゃあ、聞いてみたいことがあるんだけどね」
「何です?」
「バレンタインチョコなんてもらったりする?」
「バレンタインチョコって何?」
「女子が好きな男子にチョコレートをあげるの」
「何で?」
「愛の告白ね(笑)」
「へ~そうなんだ」
「な~んだ知らないの?」
「愛の告白なんてすごいね」


稔は子どもでも愛の告白をするのに驚いた。
そして興味本位で逆に聞いてみた。


「愛の告白ってなぜするの?」
「自分が好きだということを知って欲しいのよ」
「へ~そうなんだ」
「稔君たちはどうしてるの?」
「僕たちは時々パーティをやってるよ」
「好きな人達だけで?」
「いろいろだよ」
「いろいろって?」
「クラブの仲間とか冒険仲間とかクラス仲間とか」
「冒険仲間って優希君から聞いた冒険旅行ね?」
「うん、そうだよ」


「パーティがいっぱいあるとお金が大変ね・・・
 あっそうかお金は要らないんだった(笑)」
「ごちそうはたくさん無いけど楽しいよ(笑)」
「いいな~。その中で告白出来るんだ(笑)」
「好きな人も自然とカップルになってるよ」
「こういうのって大人の人たちもやってるの?」
「そうだよ。恋人を選ぶのにも良いみたいです」
「そうよね~結婚も子育てもお金は要らないんだ
 し、安心して恋愛ができるってわけよね」


心は稔の話を聞いて住みたい世界であった。
そういう世界が早く実現すれば良いのにと願った。
そして次の質問を投げかけてみた。


「ねえねえ、結婚相手ってどうやって決めるの?」
「そんなの子どもにわかるわけないじゃないか」
優希が口を挟んだ。
「結婚は自由だって言ってたよ」
「なんだ、答えるんかい(笑)」
「そうだろうね~。お金のために我慢しなきゃい
 けない私たちの世界より自由なんだと思う」


心はうらやましそうにつぶやいた。