お金を知らない子(23)

優希は心と稔の会話を聞きながら稔に聞いてみた
いことを見つけた。
そして
稔に聞いてみた。


「ねえ稔君。稔君の夢って何?」
「夢ですか~?いま思っていることはね。社会の
 役に立つものを何か発明したいってことです」
「なんだかすごい話だね」
「すごくないですよ。アイデアを出すことが好き
 なんです。学校の授業でもアイデアを出し合う
 授業があってみんなと話し合うのも好きです」
「へ~僕たちはお金をたくさん稼いで大きな家に
 住んだり高級車に乗ることが夢にしている友達
 が多いよ」


「やっぱりお金をたくさん稼ぐことなんですね」
「お金持ちになることが成功者だと言ってるよ」
「へ~、お金持ちにならないと成功者になれない
 の?尊敬される人だけじゃないんだね」
「夢や目標を持って実現することが成功だって」
「それは僕たちは達成者たと聞いたよ」
「なるほどね~表現のし方がちがうんだ~」


優希はお金の要る世界とお金のない世界の違いは
何度も聞いて理解したつもりだったが生き方まで
違うとは想像できなかった。


「稔君の世界では人生が楽しくなる気がするね」
「うん。おもちゃのお金で遊ぶ人生ゲームをやっ
 てみて思ったんだけどね、お金がないと出来な
 いなんて大変だな~って思ったよ」
「そうだよな~。お金を稼ぐことで精一杯だよ」
「なんだか中年のおっさんが愚痴を言ってるみた
 いだな~(笑)」


健司が話の途中で口を挟んだ。
稔の世界の話はみんなが興味を持ったがこれ以上
稔を預かっていては親御さんが心配するであろう
と健司はこれで終わりにしようと思った。


「さあ、今日はこれくらいにして明日は晴れるか
 ら山に行くよ。稔君も一緒に行くか?」
「はい。一緒に行ってお父さんに連絡します」
「よし。わかった」


その日の夕飯は稔も心も一緒に稔との送別会と称
してお別れパーティをやった。
優希も心も「稔君の世界に連れて行って」と稔に
頼んでいたが、もちろんそれは出来ることではな
かった。


翌朝優希は学校へ出る前稔に言った。


「稔君、すごく楽しかったよ。ありがとう。僕は
 こちらの世界で少しでも稔君のような世界にな
 れるように頑張るよ」
「うん。僕もすごく勉強になったよ。ありがとう。
 毎日の当たり前の生活が素晴らしいことにも気
 が付いたよ。いつまでも元気でいてね」
「うん。ありがとう。稔君もね。じゃあバイバイ」
「バイバイ」


二人の別れが終わって健司は山の上のレストラン
に稔と向かった。
途中、稔は涙ぐみながら健司に言った。


「健司さんありがとうございました。すごく良い
 勉強になりました。今の生活に感謝しなければ
 いけないな~って思いました」
「そうだねー。お金の要る世界は苦労が多いけど
 どちらの世界も生きていることに感謝だね」
「はい。本当にありがとうございました」


稔は山上レストランに着くと父親に電話をした。


「お~!稔か?もう良いのか?」
「うん。いっぱい楽しんだよ」
「そっか~。良かったね。じゃあ気を失った所で
 待っててくれないか。帰れるようにするから」
「うん。わかった」


稔は健司と店員にお別れの挨拶をして約束の場所
に向かった。
そして
周りが光った途端、人が多いスキー場に戻った。
なぜそのようになったのかは稔にはわからない。
それより元の世界に戻れたのが嬉しかった。


その後
稔が社会人として働く頃嬉しいニュースを見た。
「一つ前の世界が世界平和を実現しました」とい
う内容であった。


そして
世界平和が実現するきっかけは「12歳の少年が
世界を変える」という小説で主人公は稔という少
年だった。
稔はそのとき思った。
「健司さんや優希君が頑張ったに違いない」と。

 

「12歳の少年が世界を変える!?」
http://ncode.syosetu.com/n3484dq/
「ユーチューブ用」
https://www.youtube.com/watch?v=FlHQy_KQfQQ&list=PL9UJQ57g66PEB7zZpGHYsvNzZJPCl_3ct


おわり