雑談会第九回(対策意識)

「子供の教育に大切なのは何だろう?」
「昔から『人様に迷惑をかけるな』だよね」
「それを変えてみたらどうだろう?」
「それはまずいでしょう」
「幼少の頃は親が喜ぶ顔を見るのが嬉しいよね
 それは親が教えていない教育でしょ?」
「たしかに」


「人が喜ぶことをしなさいと教えていないのに
 親が喜んでくれることを率先してやるよね」
「その気持を育てていくのが良いと言うの?」
「そうなんだよ」
「それを聞いて性善説を思い出したよ」
「人間にはもともと善の心があるってことよね」
「そうそう」
性悪説もあるよね、あれってどう?」
「自分の命を守るためにある能力じゃないの?」
「いろんな意見があっても良いよね」


「それで?」
「親や周りの人の喜ぶ顔を見ることに喜びを感
 じることを褒めると良いと思うんだよ」
「それは家庭の中から出来るよね」
「うん、それを学校までやっていけば親と学校
 で両方とも出来るから子供は混乱しないしね」
「それで人が喜ぶことをしようが良いわけね」
「人が喜ぶことをすると言うことは人に迷惑を
 かけてはいけないということが身に付くよね」


「考えてみると、人に迷惑をかけない生き方は
 人と関わるのを出来るだけ避けたくなるよね」
「だから『隣は何する人ぞ』になるんだね」
「人間関係が希薄になる原因でもあるかもね」


「それを教育の基本にすれば良いわけね」
「そうなんだよ」
「それと気になることがあるんだけどね」
「なに?」
「助け合いや困った時の対処のこと」
「どうして気になるの?」


「助け合いって困ってる人への援助でしょ?」
「助けてもらう時って人に迷惑をかけてしまう
 という負い目が心を痛めると思うんだよ」
「それが今までの教育の後遺症かもしれないね」
「今まで人様に迷惑をかけてはいけないという
 躾が心の中に沁み込んでしまったんだよね」
「だからこそ人が喜ぶことをする教育が必要ね」
「助け合うのは当たり前の社会だということね」


「考えてみれば今の社会も助け合いの社会だよ」
「どういうこと?」
「会社で働くということは社会のためでしょ?
 自営業でも公務員でもお医者さんでもみんな
 社会に必要な仕事をしているんだからね」
「そっか〜、困った時の助け合いも大切だけど
 困る人がいないようにすることも助け合いね」


「お金の要る社会では大人になってお金を稼ぐ
 必要があるから損得勘定で物事を考えるし
 競争社会だから他人より勝ろうと頑張るよね
 お金を稼ぐ必要のない社会なら周囲の人たち
 の喜ぶ顔を見るために自由に働けるよ」
「いいな〜そんな社会で生きたいもんだね」
「でしょ?」
「子供たちもそう思える教育が良いと思うよ」